あなたの会社は「Excelの壁」に阻まれていませんか?
あなたの会社にも、ベテラン社員にしか扱えない複雑怪奇なExcelファイルや、「あの人しかできない」属人化した業務はありませんか?
市場の変化に素早く対応しようにも、この「Excelの壁」と「匠の壁」が立ちはだかります。
本当に解決すべきボトルネックは、日々の「作業」ではなく、その裏に隠された、複雑で変化する「ルール」や「意思決定のロジック」にあります。
本ブログでは、そのルールを組織の最強の武器に変えることができる「BRMS(ビジネスルールマネジメントシステム)」をご紹介します。
製造系のルールは意外と難しい?
製造業務の処理は難しいのでプログラムでないとだめだという意見もあるでしょう。
自動車を例にその様子を垣間見てみましょう。自動車を作る場合に必要な関連要素をあげると要求・仕様・モジュールであると言えます。そしてこれらが混合されたものがルールになるわけです。イメージは以下のとおり。

これら3つの要素の組み合わせが代表的なルールになりますが、場合によっては、要求と仕様から適合したモジュール(エンジンタイプなど)を導き出すルールもあり得ます。
ルール1:最大積載量4tで適用可能なエンジンタイプの候補を列挙する。
ルール2:最大積載量4tで適用可能なエンジンタイプに”直列3気筒_160PS”が該当するかを判定する。
また、仕様には排ガス規制など法的なものもあり迅速に対応が求められることもあります。
驚きの発見:問題は「プログラム」ではなく「ルール」
従来のシステムでは、これらの多くのルールがExcelマクロコードやプログラムコード内部に固定されています。ルールが変わるたびに、IT部門にシステム改修を依頼する必要がありました。
BRMSの核心:ルールをプログラムから解放する
BRMSは、業務アプリのプログラムから「ビジネスルール」だけを切り離して管理します。
これにより、現場がビジネスの変化に応じて迅速にルールを変更できるようになり、企業の俊敏性が劇的に向上します。
日常にたとえてみましょう。
プログラムは「レシピの手順」、ルールは「調味料や分量」
従来は、料理レシピにすべての情報を記していたため、味を変えたいたびにレシピそのものを書き換える必要がありました。
BRMSでは、レシピ(プログラム)はそのままに、塩や砂糖の量(ルール)だけを自由に調整できるため、現場で簡単に味を変えられ、好みに応じて素早く対応できるのです。
宝の山は「工場の外」にもあり!BRMSの適用個所
製造業のDXは、生産ラインだけではありません。BRMSの価値は、企業のバリューチェーン全体に及びます。
- 企画~開発:部品の組み合わせ規格を自動チェック、複雑な部品番号を自動生成。
- 営業:顧客情報に基づき、最適な見積もり価格を瞬時に算出。
- 人事・経理:販売コミッション計算を自動化し、企業戦略とモチベーション向上を両立。
- 物流:最適な配送ルートを自動決定し、コストを削減。
- アフターサービス:FAQ応答、機器診断。 etc.
企業活動のあらゆる場面に潜む「ルール」を体系化し、会社全体の生産性を飛躍的に高めることができます。

暗黙知を「共有資産」へ:脱・属人化の鍵
ベテランの頭の中にしかなかった「暗黙知」を、誰もが見て理解できる「形式知」へと変換することが可能です。これにより、特定の個人に依存する体制から脱却できます。
導入効果の現場の声:「ルールの見える化を実現できたので現場部門でルールを共有しながら、業務改善ができるようになった。」
個人のノウハウが組織全体の「共有資産」に変わる、これがBRMSの強力な価値です。

韓国製造業の飛躍も、この戦略から
韓国製造業が劇的な成長を遂げた原動力の一つは、BRMSによる「知識集約型」モデルへの戦略的転換です。
1990年代末には欧米から科学的な設計手法を積極的に導入し、個人のスキルに頼るモデルから、知識とルールを体系化して競争力を生み出すモデルへとドラスティックに舵を切りました。これは、組織的な「知識のシステム化」がいかに強力な競争優位性を生み出すかを示す、強烈な実例です。
***企業の利益は「設計図」で決まる***
製造業の業務活動は上述のとおり、「上流(設計・指示)」と「下流(生産・販売)」に分けられます。ここで重要なのは、「上流プロセスの品質が、下流プロセス全体の成果を決定づける」という事実です。
マイケル・ポーターのVC(Value Chain)では、企業利益に直結するプロセスを見極め、重要な部分へ資源を集中させることが求められます。製造全体を戦略レベルから最適化し、実行可能なオペレーションへ落とし込む考え方です。
VCを構成するECMは企画から製造指示までの上流工程、SCMはその指示を受けて調達・製造・販売・サービスまでを担う下流工程にあたります。上流で不十分な成果物が生まれると、下流のSCMが整備されていても十分に機能しません。

そのため、設計プロセスの質を高め、下流では正確なオペレーション(業務自動化)を実行することが利益率向上に直結します。従来のCADは個々の設計作業を支援するにとどまり、組織的な知識活用まではカバーしきれません。
BRMSはこうした課題に応える仕組みで、業務オペレーションの自動化だけでなく、設計・判断の知識を可視化し、IT化・再利用を促進する有効なソリューションとなります。
最後に
真のイノベーションは、ツール導入ではなく、ビジネスを支える「ルール」をどう捉え、どう管理するかという根本的な視点の転換から始まります。
Excelのセルやベテランの頭の中に眠っているその「ルール」こそが、あなたの会社の最も価値ある資産です。
※ 参考文献 「バーチャル・エンジニアリング」内田 孝尚(著) 「製造業の多様な課題を解決する業務改革支援ソリューション」日立評論