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AIとBRMS(InnoRules)で次世代オートメーションの構築事例

2025年8月5日 by
AIとBRMS(InnoRules)で次世代オートメーションの構築事例
innorules, イノルールズ株式会社

インテリジェントオートメーションの新境地 - 「推論」と「論理」のシナジー


   デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、企業の競争力を高める上で業務の自動化は極めて重要です。特に注目されているのが、AI(人工知能)とBRMS(ビジネスルール管理システム)を組み合わせたソリューションです。この強力な連携は、単なる効率化を超え、よりスマートで質の高い意思決定を可能にし、業務を加速させ、企業に戦略的な価値をもたらします。

BRMSのルーツは、30年以上前の人工知能研究、具体的には専門家の知識をルールとしてシステムを動かすという発想に遡ります。その後、ビジネスアプリケーションの複雑化と共に、ルール管理に特化したシステムへと進化しました。


企業が直面する課題:「ブラックボックス」と信頼の欠如

   現代のAI、特にディープラーニングなどの技術は、時に「なぜその結論に至ったのか理由が分かりにくい」という「ブラックボックス」問題を抱えることがあります。この特性から特定のビジネスでの利用が難しいと見られることもありますが、適用箇所が適切であれば、BRMSと組み合わせることで業務効率化に大きく貢献できます。


「グラスボックス」としてのBRMSソリューション

   その理由は、BRMSがルールの実行過程を可視化し、どのような条件でどのルールが実行され、結果が導き出されたのかを明確に説明できる仕組みを持っているからです。これにより、AIの「ブラックボックス」性を補完し、根拠が説明できる信頼性の高い業務自動化を実現します。AIが推論した結果を、BRMSが具体的なアクションへと確実に結びつけ、そのプロセスを透明化することで、信頼性の高いスマートな意思決定を可能にするのです。

AIとBRMSを組み合わせた業務自動化において、AIは主に以下の役割と強みを発揮し、スマートな意思決定の基盤を築きます。

  • データの「情報」への変換と精緻化: AIは、手書き文字の判定や曖昧な部品コードの特定など、不完全・曖昧なデータを識別し、BRMSが処理できる正確な情報へと変換する能力に優れています。これにより、従来人が対応していた不確実性を含むデータの処理をシステム化し、業務を効率化できます。
  • 膨大な知識・経験からの推定・候補導出: 例えば、原子力発電所の機器点検業務では、機器の状態測定値と過去の膨大な経験データから、症状の原因候補を導き出す部分をAIが担当します。これは、AIが最も得意とする「推し量る部分」や「推論」の領域です。
  • 顧客状況の特定と優先度判断: 受発注・納期回答業務の事例では、顧客の要望をAIが処理して優先度を決定します。これは、ベテラン社員が行っていた状況に応じた判断をAIが代替し、業務の属人化を防ぐ好例です。

AIは、技術の進化に追従することで自動化の精度を継続的に向上させることができます。AIがBRMSへ正確な入力データとして情報を渡すことで、これまで人手で行われていた業務のシステム化範囲を広範にカバーし、よりスマートな意思決定へと繋がるのです。

具体的なビジネス事例から、AIとBRMSがどのように連携してスマートな意思決定を実現しているかを見てみましょう。


実践事例:インテリジェントオートメーションのケーススタディ


1.自動車リース会社の請求書確認システム

    • 課題: 毎月10万件もの紙の請求書を目視でチェックしており、部品番号や車番などのデータが不完全で自動化が困難でした。
    • AIの役割: 紙の請求書をAI-OCRで読み取り、この段階で曖昧な部品番号などをディープラーニングで特定・精緻化し、BRMSが処理できる正確なデータに変換します。AIが「情報」を生成する役割を担います。
    • BRMSの役割: AIが特定した正確なデータを受け取り、請求書の妥当性チェックなど、明確な規則に基づく判断を行います。さらに、「この車種のこの修理なら普通はこうだ」といった「気づきメッセージ」をルール化してフィードバックすることで、修理工場のミスを減らし、業務品質向上に貢献します。BRMSはビジネス知識を活用し、業務を最適化する役割です。
    • 効果: 人手による審査が必要な件数が半減し、チェック精度は2倍に向上しました。AIが入力データの品質を高めることで、BRMSによる正確でビジネスに貢献する判断が可能になった事例です。


2.受発注・納期回答業務の品質平準化

    • 課題: 納期問い合わせに対し、ベテラン社員は顧客状況に応じて優先度を考慮できるが、経験の浅い社員は先着順で処理しがちで、サービスにばらつきが生じていました。
    • AIの役割: 顧客からの要望や過去の取引データなどをAIが処理し、対応の優先度を決定(スコアリング)します。これにより、属人化しがちな「顧客の状況に応じた判断」を自動化し、スマートな優先度付けを行います。
    • BRMSの役割: AIが決定した優先度スコアを受け取り、「優先度が高ければこの在庫引き当て方」「中くらいならこの納期回答ロジック」といった決まった手順をルール通りに実行します。これにより、ベテラン社員の判断基準がシステムに組み込まれ、業務が平準化されます。
    • 効果: 経験の少ない初心者でもベテラン社員の判断を再現できるようになり、業務の平準化と品質向上が実現しました。


これらの事例から、AIは「推し量る部分」や「不確実なデータの整形・特定」といった、人間が経験や知識から推論しながら遂行していた業務の前半部分を得意とし、BRMSは「特定の条件からアクションを決める判断処理」といった、明確な規則に基づく業務の後半部分を得意としていることがわかります。この役割分担が、スマートな意思決定の鍵となります。


AIとBRMSの連携は、データ(Data)を情報(Information)に変換し、それを基にビジネス知識(Knowledge)や知恵(Wisdom)を適用するというDIKWピラミッドの考え方に沿った、非常に効果的なソリューションと言えます。AIは、文字認識、データの精緻化、顧客の状況特定といった分野で、技術進化と共に自動化の精度を向上させ、「データを情報へ変換する役割」を担います。そして、AIが変換した高精度な情報をBRMSへ渡すことで、BRMSはルールの可視化、根拠が説明できる確実な業務自動化、そしてナレッジ活用といった「業務的メリットを最大限に引き出す役割」を果たします。

このようにAIとBRMSを組み合わせる方法は、従来人手で行ってきた業務に特に適用しやすく、業務の効率化だけでなく、業務品質の継続的な向上や平準化、さらには組織の知識資産化とプロセスの透明性確保といった、より戦略的な価値を生み出す可能性を秘めています。

AIの判断がますます重要になる中で、その根拠を理解し、ビジネスとしてコントロールできるようにする意味で、BRMSのような仕組みの重要性は今後さらに増していくことでしょう。 AIとBRMSの相乗効果により、企業のビジネスは一層加速し、持続可能な成長がより力強く支援されることが期待されています。